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朝日:八久和川出谷川中俣沢

2001年8月11日(土)〜15日(水)
L長南・古川原・望月


八久和。憧れの八久和である。
残雪の5月はじめ、強風に文字通り匍匐全身を強いられ辿りついた三方境から八久和の源頭部とその先に続く谷を眺め「いつかこの谷を遡ってこの源頭を訪れてみたい」と強烈に想ったのはもう何年前のことだろう。

そのころは沢も雪山も単独行で、そのどちらにも単独の限界を感じていた時期でもあった。
当時の実力ではひとりで到底八久和の中俣など入れなかったであろう。しかし八久和を困難な沢とは思わなくなってしまった今となっては、あの当時だったら感動したであろうものにも感動できるかどうか疑問に思うようになってしまった。いったい何に鈍感になってしまったのだろうか。
そんな少し寂しい気持ちをもって5日間の沢旅に入ったわけであるが、そこはやはり八久和。長い沢旅の終わり近く、奥の二俣あたりでは熱いものがこみ上げてきてしまった。
今年は水量が少なく荒天もなく、充実した5日間であった。

8月11日(土) 曇り時々晴れ
八久和ダム上流の左岸林道終点までタクシーで入る。アブはそれほどいない。
身支度を終え左岸の道をスズクラ沢出合まで佐藤パーティと共にイナゴを捕りながら行く。
天気は上々、皆大汗をかいたようでスズクラ沢で水に浸かったり日陰でのびたりして大休止。ここで佐藤パーティと別れる。3日後のビールを佐藤パーティにお願いして、我々は再び道を急ぐ。

フタマツ沢手前でアクシデント発生。フタマツ沢への下りで望月君が足を滑らせヤブに消えた。普通ならそこで止まる場面だが、運悪くその下が崖で止まらずに消えた。
消えたその下が見えず、思わず「ザイルッ!!」と古川原君に叫んで見に行くが、どうやら沢まで落ちたらしく道からまわって沢に降りる。古川原君が望月君の安否を気遣う声が山に響き渡る。

どうやら3mくらいの滝壷に左岸の6mくらいの壁から落ちたようで斜面を合わせると10mくらいは落ちたようだ。幸いなことに滝壷だったのと滝壷の底が砂に埋まっていたので、うまく着地できたようだ。しかし着地時に滝壷に渡っていた倒木で胸を打ったらしいので、両足首の捻挫と肋骨のチェックをした。足は大丈夫だが、肋骨は後から来る場合があるので少々心配だ。本人も落ち着いているし様子を見ながら予定通り行動することにする。しかし何ともなかったのは勿論運もあるが、彼の沈静さと運動神経によるところが大きかった。
フタマツ沢を下り八久和本流に降り立つ。
八久和である。しばらく感動に浸りながら辺りを見渡し、もいちどじっくり見渡す。

水量が少ないようなので、対岸の道に上がらず本流突破することにする。
ノウ沢までは浸かったり泳いだり進んで行く。泳いで水圧に阻まれたら対岸に泳ぎ渡り、へつりながら水流に抗って行ける所まで泳ぎ進む。進めなくなったら再び対岸に渡り直して突破していく。そんな風に若い二人はどんどん泳いで行く。

ノウ沢出合あたりで大休止。竿を出しに行くが私では本流筋は難しいようだ。
ここからは道に上がろうと思ったが踏み跡がなかなかわからなかったので、行き詰まったら右岸に上がって道を探そうと、そのまま本流筋を行くことにした。

1時間くらいで右岸が台地上のところまで抜けれると思ったが、やはり八久和、そうは簡単に通してくれず、泳いだりして手間取っているうちに日が翳ってきてしまった。
ここにきて、水に浸かりすぎたのもあるだろうが、やはり先ほどの滑落の負担がじんわりと効いてきたようで望月君が遅れがちになる。古川原君も彼がバテるのを見るのはワンゲル時代を含め初めてなようでしきりに案じている。

逃げ場所を探して急く気持ちと、焦らして怪我をさせぬようにゆっくり行かねばというジレンマに悩みかけた頃、右岸の台地に上がれるポイント見つけた。
台地に上がって少し行くと予想通り踏み跡に出た。あたりはもう薄暗い。あとは泊場を探すだけである。カクネ沢までは思ったよりも距離があり、予定の長沢手前の泊場はすでにあきらめていたが、本流の河原で泊場を探すのも諦めた。ここまでくればあとは快適か不快かだけの問題である。状況からみて不快でも早く泊場を決めたほうがよさそうだ。

結局、小沢の横にビニールシートが張ってあり焚き火もできそうなのところがあったのでここを泊場とした。水もあり焚き火もできるしタープを張る手間も省ける。森の中で薄暗く虫が不快なだけである(翌朝2人はヤブ蚊にかなり刺され顔がブツブツになりはしたが...)。
焚き火がついた頃には望月君も復活して食当として焼肉を焼きはじめる。さぞかし重かったことだろう。感謝しながらビールと頂く。ポツポツと雨が降ってきたが樹冠が幸いして小さな焚き火だが雨は落ちてこない。

こうして夏合宿の1日目は終わった。
雨は夜半には本降りになったようだ。

8月12日(日) 曇り時々小雨
7:00起床。昨日は遅くまで行動したので、今日と明日はのんびり八久和を楽しむことにする。どのみち明後日は中俣沢に入ると泊場がなく、その手前までなので余裕がある。望月君も痛みはないそうなので安心だ。

長沢、芝倉沢と過ぎてもまだ八久和は沢というより川である。栃ノ木沢手前のゴルジュも水量が少ないので難なく通過。エメラルド・グリーンの水が美しい。小国沢の出合には幕場敵地があるとガイドブックには書いてあったが、それほどよさそうな場所は見当たらなかった。
小赤沢あたりで昼飯がてら竿を全員であちらこちらと出してみるが魚信はなし。
茶畑沢の出合すぐの滝壷でアタリがあったがバラしてしまった。

平七沢が近づくと登山道から来て帰っていく足跡が目立つようになる。あまり近づきたくないので平七沢すぐ手前右岸の整地された台地でタープを張る。

焚き火と食事の用意を二人に任せて釣りに行く。雨が降ってきたが、泊場近くで20cmを釣り上げ食いがたってる事を確認して本流を釣り上がるが、やはり隠れるところがない本流筋は私には手が出ず平七沢に入る。しばらく遡ると隠れる場所のあるポイントがあり26cmをあげる。

雨も止み焚き火も今日は盛大になる。食当は古川原君、今日はポトフである。これまた重い食材である。まぁ、今回は中俣沢以外で荷物が問題になることはないし、彼らはそれだけ担いでも全然私よりも速いのだから問題ないだろう。
今日はゆったりとしたところでゆっくり寛ごうと思っていたらまたまたアクシデントで発生である。

冷やしておいたビールが先ほどの雨で流されてしまった。そんなおざなりな場所ではなかったはずなんだが。無念である。
釣り上げたイワナを佐藤さん直伝のバター焼きにする。なかなか2人には好評であった。
外で寝ていると雨が降ってきたのでタープに入る。2人はまたヤブ蚊にやられたようだ。

8月13日(月) 曇り時々晴れ
6:30起床。今日もゆっくり出発する。
岩屋沢あたりは素早く通り過ぎる。登山道横断地点手前で釣り師の集団を背後からそぉ〜とかわす。今回はじめて会う人々だが全くうれしくもない。オツボ沢出合すぐにかかる滝は出合手前から左岸をオツボ沢を越して巻き、コマス滝手前で釣り師を2人抜くと足跡もなくなり、人口密度は再び0に近くなる。コマス滝は少し手前の左壁を登り踏み跡にでて簡単に巻く。このあたりの巻き道にはしっかり踏み跡がついているようだ。

今日は西俣沢出合の手前までだが、早めに泊場に着いて上流に釣りあがるか、ここからのんびり泊場まで釣りあがるか悩むところだが、相談の結果、後者で行くことになった。

このあたりまで来ると身を隠せるポイントも出てきて、32cm,30cmと久しぶりの尺オーバーを釣り上げる。初挑戦の望月君も30cmといきなり尺物デビューである。あと23cmを釣って呂滝手前まで行くと、珍しく堂々釣りの古川原君が巨体を縮めてトロ場の左壁の上から竿をだしている。近づいてみると、40cmの大物をバラしたらしくしきりに悔しがっている。右からそぉ〜と覗いてみるが、確かに40cm級の巨体が何体か窺える。竿を出してみるがすでに気づかれているようで見向きもされない。

古川原君は糸を切られボットンと落としたらしい。糸の太さを聞いてみると0.8号!!そりゃぁ無茶だよ、古川原君。ちなみに私は道糸3号に5号のチヌ針の直通し。

呂滝は右から巻いて枝沢から降りる。しばらく遡って左岸の砂地の河原を泊場とする。
準備をしていると軽装な2人パーティが追い越していった。登山道から入ったのだろうか、やけに小荷物だ。

今日は刺身とイワナ汁。チヂミにポテトサラダとマーボー豆腐。乾燥物ばかりにイワナが加わったおかげで豪華になった。

8月14日(火) 晴れ
5時起床。
今日は昨日までの沢旅の締めくくりのまさしく「沢登り」だ。しかも大鳥池の東沢出合までの長丁場だ。技術的に不安はないが体力的にきつそうだ。

西俣沢を分けるとゴルジュっぽくなり東俣沢を分けて沢は右に曲がる。5m前後の滝が幾つか出てくるがどれも簡単に直登。大きな釜が現れるが左からへつり気味に泳ぎ這い上がる。ザイルも出さなくていいしザックも背負ったまま泳ぐので頗るはやい。ただ朝の8時前に泳ぐのはやはり寒いが、日も昇り天気も上々、明るい沢筋なので気分がいい。

15m大滝でアクシデント。カメラのフィルムを入れ替えて大滝の写真を撮ろうと振り返ったら、なんと古川原君がザックを背負ったままフリーで左壁にとりついているではないか!!後で死ぬほど怖かったと言っていたが、あの高さになると直登するときはザイルを引いて支点をとる準備をしていくこと。厳重注意である。

そもそも落ち口の様子もわからない滝を何の登攀準備もせずに登るのは論外である。あとルートとりに不安があるときはザックを置いていくこと。以後気をつけるように。
案の定、S字峡のだいぶ手前からスノーブリッジが出てきた。50cmあるかないかの薄いものなので脇に上がって乗っこす。2つ3つそんなスノーブリッジを乗っこすと6mのチョックストーン状の滝。登れそうもないので少し戻って右の枝沢から巻く。

S字峡手前から雪渓状になるが途中がところどころ切れていてイヤな感じ。まず行けるところまで雪渓を登ってみるが、かなり高く降りられそうもない。S字峡の中まで一度途切れた雪渓がつながっているようにも見えるが、中でズタボロになっていたら戻れもしないので巻くことにする。

左岸の潅木が一番低くまできているところで雪渓から登る。そのままS字峡のカーブ部分をトラバースしながらショートカットして枝沢から降りようという腹積もり。勾配が急な場所での腕力トラバースなので結構疲れる。途中から雪渓の切れた部分が見えたが高さは10m以上ありそうだ。降りようなんて思わなくて正解だった。上流を見ると連瀑帯が望めた。すごい眺めだ。100m強の高度差をひとつの滝のように落ちているように見える。とてもここからでは登れるようには見えない。枝沢へは草付を避けて下り、そのままザイルなしでクライムダウンできた。2時間くらいかかるかなと思っていたが1時間弱で巻き終わる。
二俣に12時前に着いた。予想以上のペースだ。これなら日のあるうちに集中場所へ着けそうだ。

いよいよ連瀑帯に入るが、古川原君は大滝以来慎重になりすぎていて、登れるよと言ってもどんどん巻いていく。
見た目と違ってすんなりと連瀑帯を越えると沢は平になり、奥の二俣あたりはお花畑になっている。左は狐穴小屋に抜けるようだが、ゴミが多いということなので左に入ることにして1回目の交信を試みる。畑沢パーティ経由で交信もできたが、畑沢パーティは今日中に集中できそうもないので日暮沢小屋に下るということだった。

スダレ状の滝を越え二俣を左に入るとあたりは草原状になり、水がきれるあたりで草原に上がり大休止。念願の八久和源頭部は少々あっけなっかたが、それでもひとり熱いものと笑いを押し殺すのに苦労した。

あとは登山道を以東岳を越えて大鳥池まで行くわけだが、さすが平均年齢26歳弱のパーティの足は速い。登りにかかってもスピードは落ちず、なんと集中時間に集中場所についてしまった。30分ほどして小屋でビールを買ってきてくれた佐藤パーティもやってきて2パーティながら無事集中できた。

8月15日(水) 晴れ
泡滝ダムからのバスの時間に合わせ7時半ころ出発。もう登山道なのでみな離合集散を繰り返しながらひたすら下る。

泡滝ダムのバス停で河原に降りみんなで行水。松ちゃんが昨日調子が悪く残したビールを出してくれて回しのみしてバスに乗り込む。

なぜか上田沢の集落のはずれでバスの乗り継ぎ。炎天下のアスファルトの上で自販で買ったコーラでコークハイを松ちゃんが作り飲み始めると、調子がついてしまい、関さんが上田沢の集落まで炎天下の中、ビールを買いに走ってくれて宴会モードにはいってしまった。
2年前と同じく「ぼんぼの湯」に入ってから鶴岡にでて帰京する。(記:長南)

フタマツ沢から本流に降りる。今年は水量が少ない。

八久和だ

水量が少ないので山道を行かず本流を行く

泳ぎまくる

2日目になっても八久和はまだ川である

水は綺麗だ

栃ノ木沢手前のゴルジュを泳ぐ

エメラルド・グリーンの水が美しい

コマス滝あたりまでくると再び人気はなくなる

呂滝

今日のテン場はもうすぐ

西俣沢を分けるとゴルジュっぽくなる

朝の8時前に泳ぐのはやはり寒い

雪渓がでてきた

この先沢はズタボロ雪渓で埋まっている

遙かかなたに連瀑帯が...

連瀑帯を越えると...

そこは至福の場所

ここに来たかったんだ...


11日 11:10林道終点−12:30スズクラ沢13:30−14:10フタマツ沢15:00−16:30ノウ沢出合17:00−19:00B.P.
12日 B.P.9:00−9:20長沢−11:00小国沢−12:00小赤沢12:30−13:00茶畑沢14:00−16:00平七沢出合手前B.P.
13日 B.P.8:30−9:20岩屋沢出合−10:00オツボ沢−10:20(巻き終り)10:50−11:30コマス滝−14:30呂滝15:30−16:00B.P.
14日 B.P.6:30−7:00西俣沢−7:10東俣沢7:40−8:2015m滝上−9:30C.S.6m滝9:40−10:50S字狭手前S.B.−11:20二俣11:50−13:00奥の二俣13:20−登山道14:30−15:40以東岳−17:00東沢出合
15日 (この日のコースタイムは記録せず)