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南ア:野呂川シレイ沢

1998年10月31日(土)〜11/1日(日)
L長南・増田・小坂


この時期に3千m級の山岳地帯の沢に入るのはなかなかしんどいものがある。それに加え今回は一週前に積雪があり稜線には30cm〜40cm積もったらしいので、上空に寒気が入って来たらあっさり縦走に変更しようと思っていたのだが、幸運にも10月上旬並みの気温でおまけに高気圧が張り出して来ているので決行と相成った。
こんな季節の沢だから誰も乗って来ないだろうな思っていたのだが、シーズン終わり頃に入会し残り少ない今期の沢を貪っている小坂さんとなぜか父親参観をキャンセルしてまで行く気の増田さんと3人パーティになった。増田さんが乗り気なのはどうやらこの人はアルプスと名のつく山域に入るのはこれが初めてらしいのだ。珍しいと思うと同時に逍遙的だと感心もする。

金曜の夜、高尾発の甲府方面最終電車に飛び乗る。ボックス席ではすでに酒宴の準備が始められていた。そしてイイ気分で甲府駅に降り立ち、駅で2次会をして寝る。

朝6時の広河原行きのバスに乗り込む。うつらうつらとしているうちに夜叉神峠を越えたらしく車窓から北岳が見えてきた。実のところ今回の山行の目論見はこの季節に北岳を眺めながら酒を飲もうということだけであって、あまりシレイ沢にこだわっていたわけではなかった。ただ稜線よりは沢の方が静かで焚き火もできると思っただけである。しかし、いざ志れい沢橋でバスを降りてまだ陽の当らぬシレイ沢を目の前にした時、こだわりがないのなら沢じゃないほうがよかったかな、と思った。目の前に見えるのはガレの積み重なった沢で、そのガレの下部の水の出ているところで5m程の滝になっている。またその滝が濡れないと越せそうにないのである。この時期のこの時間に見る風景としては、あまりに寒々しく気が重くなる。
取り敢えず今はまだ何も考えず、カッパを着込み橋の袂から沢に下りる。できるだけ濡れないようにと右岸に渡り滝を登る。滝自体は傾斜が緩く楽に登れる。その後ガレを登りきり朝食とする。飯を食いながら先を見に行く。行く手はゴルジュのようだ。季節が季節なら何でもなさそうなゴルジュだが今回は右から巻くことにする。樹林の中を皆荷物にあえぎながら高巻く。この季節、テントは欲しいしシェラフも欲しいと荷はかさばる。おまけに昨日電車の中で見た食当の荷物には、水のはった豆腐やらアボガド丸のままやらパックされたタコやら缶詰やら...、スーパー帰りの主婦の荷物そのものであった。それに酒飲み2人。今夕は北岳を眺めながら一次会。焚き火で二次会。テントの中で三次会。それだけの酒と食料があってこの季節だから、3人ともザックで頭が後ろに曲がらず、滝は登りにくいし巻きもつっかかるわでペースは遅い。
途中で沢に降りようとしたが、ゴルジュの出口に20mの直登できそうにない滝が見えたので巻きなおしゴルジュの出口で沢に戻る。ゴルジュの上から北岳が見えはじめる。カラ松の黄葉と北岳。まだ日は当らず寒いが空も真っ青で気分がいい。
沢は次第にナメやら岩床に滝などがかかりすっきりと纏まってきた。やがて陽も当たりだし、紺色の空の下、実に快適な遡行となる。時折、現れる側壁のスラブや垣間見える稜線の岩峰が白く照らされて奇麗だ。そして30mの滝を左から巻いて目の前に現れたのは、両岸スラブに囲まれた真っ白に流れ落ちる、それはそれは美しい20m程の滝であった。
紺色の空、真っ白なスラブ、黄葉した木々と緑の木々。その真ん中で真っ白な帯のような滝。振り返れば、雪を少し被った北岳。絶景である。この明るく開放的な場所で皆しばし放心する。
大休止の後、名残を惜しみながら左から高巻く。しばらく行くと二俣に着く。二俣の真ん中から右俣の10mの滝を巻き滝上に出て、続く15mもそのまま右岸を巻く。
崩壊地のガレの対岸にテントがどうにか張れるスペースがあったので、ここを泊り場とする。早速、テントを張り、薪を集める。一次会は北岳が正面に見えるガレの上。ソーセージやらアボガドサラダやらタコのオードブルやらでビールで乾杯。日が陰ってきて寒くなったら、テン場で焚き火を着けてキムチ鍋で一杯。自家製ビビンバもある。豪勢な夕食である。

翌日も快晴。いくつか滝を越えて行くと水も少なくなり源頭っぽくなる。途中から小尾根に上がり、最後は這い松のヤブ漕ぎ少々で稜線の縦走路へ飛び出した。
3千m級の稜線の眺めはやはり大きくすばらしい。増田さんも満足そうである。コケモモなどをつまみながら大休止。観音岳まで行くと甲斐駒、仙丈と絶好の展望である。対面には小太郎沢が見える。どこかにベースを張ってこのあたりの沢で遊ぶのも面白そうだ。

下りは青木鉱泉まで駆け下る。結構なペースで下る。小坂さんが先頭でどんどん駆け下って行く。ずっとハイペースなので大丈夫かなァと思ってたら、あらかた下り終わって傾斜が緩くなったところでこけた。しばらく起きあがってこない。うつぶせに突っ伏したままだ。地面に木の根が10cmぐらい突き出ている。どうやらこれにつまずいたようだ。顔は平面の石にちょうど激突している。う〜ん、測ったように小坂さんの身長にピッタシの配置だ。ようやく起き上がった小坂さんだが、前歯が1本後ろへ引っ込んで少し欠けてしまったようだ。下唇を切って血が出ている。不思議なことにそれほど痛みはないらしい。歩くのには支障がないようなので、青木鉱泉までそのまま下る。
今は青木鉱泉まで山梨中央交通のバスが来ているらしく、最終は韮崎駅行きで18:00。待っている間に1100円というとんでもない値段だが銭湯より質素な設備と備品の青木鉱泉につかり、ビールを飲んでバスを待つ。
韮崎から電車の中で飲みなおす。甲府でワイン、ビール、つまみや飯を買い足し帰路に着く。(記:長南)


<コースタイム>
10/31 快晴 8:05志れい沢橋8:15-9:40ゴルジュ上-12:30白くて奇麗な25m滝12:50-13:40二俣-14:10テン場
11/1 晴れ時々曇り 9:00-11:20稜線12:00-16:00青木鉱泉

<交通費>
JR:飯田橋-甲府 2160円
バス:甲府-志れい沢橋 1850円
バス:青木鉱泉-韮崎 1700(荷物代200円)円
JR:韮崎-飯田橋 2250円