1998年8月22日(土)〜23日(日)
L長南・増田
急に決まった山行だったので、段取り悪く朝の新幹線での出発となってしまった。
天気は思わしくない。土合橋でバスを降りて東黒沢の堰堤の上で身仕度を整えていると雨が降りだしてきた。なんだか、この前もあったシチュエーションだ。そういえば、二口の穴堂沢の林道でタクシーを降りて身仕度をしていると雨が本降りになってきて...。あの時は増田さんと2人。今回も増田さんと2人...。フ〜ム。「増田氏:逍遙の雨男説」が頭の中でちらつく。でも、今年の夏合宿の時期は天候が悪く、いろいろなところで撤退やら急遽の場所変更などの話を聞いたが、増田さんと私のパーティはその狭間で沢での3日間は晴れていたのである。「増田氏:逍遙の雨男説」は信じるに足りない。そう信じこんだふりをして歩きはじめる。
歩きはじめて早速ナメになる。が、流木がうるさい。ハナゲの滝は左から登り最後が濡れていてイヤラシイので左の巻き道に逃げる。去年、白毛門沢にきた時は右から登ったと思ったが、濡れていると無理だろう。ナメが続くようになり白毛門沢との出合いになる。釣り師が一人いたが後ろからさっさっと追い抜く。
白毛門沢を分けてからもナメは続き気分はイイ。相変わらず小雨が降っているが、幾つか滝を登り、ちっちゃなゴルジュで遊んだりしていると楽しくなってくる。丸山沢に入ってもナメは続く。特にこのあたりはナメがとぎれていない。ちょっとこの長さは尋常ではないことにようやく気がつく。いったいどこから続いていてどこまで続くのだろうか。ここはきちんともう一度、確認しに来なければならないな、と思う。
広々としたナメ滝というか岩盤帯のようなところを過ぎてもまだナメは続く。雨も上がり薄日がさしてきて幸せな気分になる。やはり「増田氏:逍遙の雨男説」は過去のものだ。
ナメがようやく途切れ、草ヤブがうるさくなってきたところで二俣を右に入る。しばらくヤブっぽいが、そのうち深淵とした樹林帯になり、冷気が心地好い。導かれるままにブナ林の中のチョロチョロした流れの中を登り、少し笹藪を漕いでブナ林に中の笹に覆われた鞍部に出る。
鞍部を乗っ越し、ウツボギ沢の支流を下降する。たいした滝もなく細い流れを下って行くとウツボギ沢に出る。河原状の流れを少し下ると広河原だ。天候によってはここで泊まって宝川温泉に下ることも考えていたが、天気もよくなり時間も早いのでナルミズ沢を遡行することにした。
ここからしばらくは右岸に登山道があるが、沢の中を行く。増水はしていない。数年前、増水した時に事故のあった滝も増水していない時に見ると、何でこんな所でと思うような、なんでもない落ち口の徒渉なのだが、沢の事故というのは得えてしてこういう何でもないような所でよく起こる。
しだいに沢は開け明るい雰囲気の中、時折深い釜や淵を半分泳いだりして進んで行く。 草付きの緑にバックの地蔵の頭のスラブが映えて美しい。大石沢を過ぎてちょっとしたゴルジュを右岸から巻いて、再び開けたあたりの河原でツェルトを張って今宵の宿とする。
ここは快適なビバークサイトなのだが薪が少ないのが玉に傷。それでもなんとか火をつけるといつもの夜がやってくる。
朝を充足した気持ちで迎える。昨日の東黒沢のナメはきれいだった。ナルミズ沢はここまででも十二分に美しかった。天気はイイし、これからはいよいよナメと草原の源頭だ。 傾斜のあるナメ滝を左から快適に越えると二俣にでる。右に入ると期待通りに草原の中のナメ、ナメ、ナメだ。極楽気分でゆっくりと景色を愛でながらいく。水量が少なくなってくると草原の中の窪地になる。そのまま窪地を進むと草原に出てしまう。ここにはヤブ漕ぎというものはないらしい。
ナルミズ沢は噂どおりの、期待を裏切らない沢だった。無理矢理、難癖をつければ、人が多いのと薪が少ないことぐらいだろう。そう、あと下山路が長いこと。沢から来たものにとって朝日を越え白毛門までのあの縦走路は長くつらい道だ。
東黒沢はナルミズ沢に土合側から入る時に通る沢というだけでなく、それだけでも十分美しい沢だった。
なんとも耽美な沢旅であった。(記:長南)
《コースタイム》
8/22 雨のち曇り 入渓点9:10-9:30白毛門沢出合10:00-10:35丸山沢-11:25二俣11:55-12:40鞍部-13:15ウツボギ沢-13:20広河原13:40-15:20
8/23 晴れ 8:15-8:30二俣-9:45鞍部10:05-11:10朝日岳11:40-12:35笠ヶ岳12:55-13:25白毛門14:00-15:40土合橋