1998年8月8日〜11日
L佐藤・長南・増田
8月8日(土) 曇り時々雨
前夜のムーンライトで東京を出発し、早朝坂町に到着。米坂線に乗り換えて小国で降りる。このところ雨続きの上に今朝方ものすごい集中豪雨だったらしく、荒川本流は濁流と化している。予定どおり行けるのだろうか。
小国の駅前から、末沢川の越山さんパーティーと8人乗りタクシーに乗る。そのタクシーの運転手さんはここで長く商売をしているらしく、佐藤さんも越山さんも以前に乗ったことがあるらしい。針生平で末沢川パーティーと別れ、我々は大石橋まで入る。
小雨がぱらつく中、準備をして9:30出発。川は相変わらずの激流であったが、とりあえずは登山道を行くため問題はない。吊り橋を三つ渡ってカクナラ小屋に着く。小さいがきれいな小屋だ。雨が降ったりやんだりしているのでここで大休止となる。
大玉沢出合から沢へ降りる。かなり増水してはいるが、徒渉を繰り返しながら進む。緊迫した徒渉も何度かあった。徒渉訓練が役に立ったような気がする。増水の爪跡は未だ生々しく、随所に削られた跡や、草木のなぎ倒された跡が目に付く。川岸に赤いザックを発見。流されて引っかかったものだろうか。持ち主はどうしたのだろうか。いやな物を見た気がする。
13:25 蛇引沢の出合。ザックをおいて出合上の滝を偵察に行く。増水のため滝の落ち口の徒渉が不可能。水の濁りは殆どなくなったが、水量は相変わらずだ。「下の河原がテン場かな。」あきらめムードの漂う中、またもや大休止となる。佐藤さんは岩魚釣り、私と長南さんはボルダリングをしたり、ぶらぶらして時間をつぶした。さすがは佐藤さん、岩魚を2匹釣ってきた。これで今夜のおかずがぐっと豪華になる。
滝の右側から巻けそうなので、先へ進むことにする。右側は台地状になっていて、簡単に滝上の河原へ出ることができた。ここからは泊場を探しながら歩いて、ナベクラ沢の出合いにテン場を決めた。夕食は現地調達の岩魚・キクラゲに豚汁、春雨サラダ、茄子焼きそれに各人持参のつまみだ。ビールも豊富でうれしい宴会となった。
8月9日(日) 曇り時々晴れ
予定より遅れ気味であるため、4:30に起床したが、出発はいつもと同じ7:00となってしまった。水位は昨夜とあまり変わっていない。小帯沢、大帯沢までは平凡な河原歩きであっという間だ。大帯沢を越えるとゴルジュ帯となる。釜を持った小滝が連続し、全てヘツリや直登で越えていく。ゴルジュの切れ込みが深くなり、最後は怒濤の滝の落ち口を右岸から左岸に度胸のジャンプ。
沢が右へ曲がると左岸側が少し開け、河床はゴーロとなる。しばらく行くと毛無沢の出合。ここが険谷として名高い毛無沢、無く子も黙る毛無沢、生きては帰れぬ毛無沢か。出合からは滝が2 段見えるだけだが、なるほどなかなかの面構えだわい。などと観察しながら休憩した。
河原が再びゴルジュとなり、曲滝に到着。右岸を30分ほど高巻く。
そこから先は、石ころ河床のゴルジュが続く。トイ状の滝をはじめ2 〜3mほどの滝が続く。そして綾滝に到着。
滝の右側に取り付き中段を水流の裏を通って左側にトラバースする。昨年の合宿で宗像さんパーティーの報告を聞き、写真を見てからずっと来てみたかったポイントだ。ずぶ濡れになりながら、滝に引き込まれないよう注意しながら通過する。緊迫するが楽しいひとときだ。空身で通過し、荷揚げを行った。少し行って昼食。
すぐに通過不能なゴルジュに出合う。廊下の先に直登不能の滝がある。右岸の高巻きだが、取り付き点をどこにするか。結局少し戻って尾根状の出っ張りから登る。長いトラバースの高巻きで、懸垂1回で沢に降りる。
西俣沢の出合を過ぎると本日のクライマックス、大滝だ。廊下状のゴルジュの奥に3段の滝が、水煙を立てて豪快に落ちている。左岸のブッシュに取り付く。去年の記録で覚悟をしていた大高巻きの始まりだ。急斜面をブッシュを頼りに登っていく。「手に頼らず足で登れ。手の力はいざというときのために取っておくんだ。」上から佐藤さんのアドバイスが飛ぶ。
ありがたいアドバイスだが、既に手に力が入らず、足で登らざるを得ない状態になっていた。無我夢中で登り切り、藪を漕いでトラバースし、草付きのスラブを懸垂2回で滝の落ち口に降りる。長い高巻きだった。おかげで途中、2回も小便してしまった。(懸垂の順番を待っているときです)
大滝から少し行った中俣と東俣の二俣に泊場を決めた。メニューは記録していないが、また佐藤さんが岩魚を2匹釣ってきて、一晩目と変わらず豪華なよるとなった。
8月10日 晴れ
5:00起床、7:30出発。中俣沢を行くが、最初の5mの滝がいやらしい。左側から低く巻けそうであるが、この滝がまだまだ序の口で奥にはさらに厳しい滝があること、メンバーの力量、疲労度を考慮して東俣への変更を決定する。再び泊場に戻り、小休止の後東俣へ。東俣は楽勝なのかなと思っていたが、後でそれが大間違いであることを知る。
ヒノキモッコ沢を過ぎるあたりまでは平凡な河原歩き。その後は両岸草付きとなり、やがて大岩のゴーロの中、小滝が連続する。大岩の崩壊地点は、左側の崩壊した岩と地山岩盤との割れ目を突っ張りで登る。足元がクレバスのようにぽっかり口を開けている。2 条7mの滝を越えると左沢を分ける。右沢は相変わらず巨岩ゴーロが続く。
二俣を左へ行くと、7mの滝。登れそうで、一歩の手がかりがない。何度かトライしたものの結局右の枝沢を登り、左へトラバースして沢へ降りた。1時間30分の高巻きとなった。高巻きの途中、先に分けた左沢の大滝と岩峰がよく見えた。去年宗像さんたちはあんな所をよく登ったなあ。
沢へ降りるとすぐ最後の二俣だ。左を行くが、いきなり25m の滝。登山体系では35m となっているが、多分その後埋まったものと考えられる。滝の下を右から左へずぶ濡れになってくぐる。そこからは滝の左を直登する。
長南さんが空身でリードし、続いて私が登る。荷揚げをするが狭くて置き場に困る。最後に登ってきた佐藤さんがそのまま引き続き2ピッチ目をリードし、ブッシュまで辿り着く。15:00 の交信時間となるが、無線には応答無し。
ブッシュの藪を漕ぎながら降り口を探すがなかなか見つからない。視界が利かないため下がどうなっているかわからず、ザイルが届くのかどうかもわからない。迷った末に下降点を決めて懸垂で沢に降りる。17:00 を少しまわっていた。滝の直登も含めて3時間も格闘していたことになる。この時点でヘッデンを覚悟する。そこからもなかなか楽させてはくれない。
荷揚げが数回、荷を背負っての登はんが数回。時間に余裕があれば楽しい滝登りだが、このような状況では楽しむ余裕がない。滝場を終えて、18:30 無線通信が通じた。末沢川派ティーもなかなか苦労しているようだ。厳しい登りは終わったが、日が暮れてきた。
水が涸れ、ガレ場となり、やがて藪に突っ込む。灌木と這松のミックスでなかなかやっかいだ。すっかり日が暮れて星空となる。不思議と不安や焦りはなくなっていた。暗闇の中に大朝日(と思われる)山容が黒々と浮かび上がっている。距離がつかめずどこまで藪が続くのかわからない。何も考えずただ黙々と藪を漕いだ。右寄りにルートを取り、藪が低くなってきたと思ったら登山道に出た。
ほっとした。これで無事に帰れると思うと急に娘の顔が目に浮かんできた。しかしそれで終わりではなかった。大朝日までの登りがきつかった。遅々としてなかなか高度を稼げなかった。頂上に着いたとき座り込んでしまった。体力の限界だった。金玉水まで下ったら、宗像さんが迎えに出ていてくれて手を握って労をねぎらってくれた。感動の再会シーンであった。満田さんがくれた梨がこの上なく旨かった。テントに入りみんながそろって乾杯をし、満田さんがボッカしてくれたビールを飲み、戸ヶ崎さんのニンニクを食べた。仲間の存在をうれしく思った。
体力的に限界だったため、沢を下るのを変更させてもらい、登山道を下山した。私が日和ったため、上ノ大沢下降はなくなってしまった。申し訳ないと思いながらも、とても沢を下る気にはなれなかった。登山道も結構きつかったが、なんとか白滝でバスに間に合うことができた。
コースタイム
8月8日 大石橋(9:30)〜カクナラ小屋(10:30〜12:05)〜大玉沢出合(12:40)〜蛇引沢出合(13:25〜14:45)〜泊場[ナベクラ沢出合](15:45)
8月9日 泊場(7:00) 〜大帯沢出合(7:30)〜毛無沢出合(8:50〜9:15) 〜曲滝(9:25)〜綾滝(10:25) 〜ゴルジュの高巻き(12:00〜13:50)〜大滝(14:30〜17:45)〜泊場[二俣]17:
50)
8月10日 泊場(7:30) 〜中俣沢5mの滝(8:30〜8:45) 〜テン場(9:00〜9:15) 〜東俣沢左沢出合(11:00〜11:35)〜奥の二俣(13:40〜14:10)〜高巻き終了(17:10) 〜稜線(20:15)〜金玉水(21:20)
データ
タクシー代 小国〜針生平:10,980円