[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

八久和川中俣

1997年8月13日(水)〜17日(日)
L松江・佐藤・増田・横尾


八久和川は朝日連峰の北側から以東岳付近に突き上げる延長二十数キロに及ぷ長大な川だ。出発前、地図を見るたぴにその長大さにため息が出た。大袈裟に言えば「こんな長い沢旅ができるのだろうか。」そんな不安があった。しかし一方で、松江さんと私にとっては昨年台風のために遡行を断念せざるを得なかった、いわぱリターンマッチの沢でもあり、今年こそはという気持ちもあった。メンバーはリーダー岩登りの達人:松江さん、八久和の主:佐藤広さん、紅一点:横尾さん、そして私の4人。
前夜、23:09新宿発のム-ンライ卜に乗り込む。他の2パーテイ一も同じ列車に予定どおり全員集合したようだ。荒川パーティーの佐藤義さんが来て酒を飲み始めるが、私は家でだいぶん飲んできたせいか疲れて眠くなり、お先に失礼して寝てしまった。両佐藤氏と松江氏は遅くまでやっていたようだ。

8月13日(水) 雨後曇リ
6:05村上着。坂町で荒川バーティーが降り、そしてこの駅で三面パーティーと別れる。佐藤さんは昨夜の影響でなかなか起きられない。鶴岡行きの列車の乗り換え時間が3分しかないので焦ったが、なんとか間に合った。7:47鶴岡着。雨が降っている。バスまでの時間を食料の買い出しや朝食で過ごす。ここは月山や羽黒山方面行きの交通ターミナルにもなっているようであるが、天気のせいかハイカーの姿は少ない。8:35大鳥行きバス発。我々以外に数人の客しかいない。途中の落合でバスを降り、予約していたタクシーに乗り替える。荒沢ダム手前から山越えの道に入り、八久和ダムを目指す。タクシーは道の悪い中を林道終点近くまで入ってくれた。
今回の行程では今日(1日目)と4日目が厳しい。何せ今日は長沢出合あたりまで10km程を歩かねぱならない。11:O0出発。林道から沢沿いの山道へはいり、フタマツ沢まではこの本流左岸の道を歩く。出発時は小雨混じりであったのが、いつしかやんだ。ブナなどの原生林の中を行くこの道は薮が少なく、また、アッブダウンもそれほどないため思ったより快適だ。
フタマツ沢から一旦本流に降りる。ここは河原になっていて、上流に目をやるとヤロウ沢が勢いよく水流を吹き出して合流している。本流を少し遡り、右岸に徒渉して再び踏み跡へ入る。横沢出合の上流で本流へ下り、また右岸の踏み跡へ入る。
横沢からカクネ沢までは踏み跡はしっかりしているが、薮っぽい上に足場の悪い所もあり、少々歩きにくい。16:30カクネ沢着。この周辺では3パーティーほどが幕営していた。カクネ沢を越えてしぱらく行ったところから本流に下った。本流の広河原を少し遡って、17:20本日のテン場に到着。ここは佐藤さんおきまりの場所であるらしい。ずぐそぱにビールを冷やす枝沢があり、とても快適。
今回の合宿では横尾さんと私が半々で食当を分担した。今夜は横尾さんの担当で、メ二ューは手巻き寿司と斉藤さん差し入れの焼き肉(いつもながら謝々)。佐藤氏は皆の期待を一身に背負って釣りに出かけ、25cmの岩魚を一匹釣ってきた。岩魚のバター焼きも加わり、賑やかな宴となった。21:30就寝。夜中に寒くて目が覚めた。

8月14日(木) 晴れ
5:00起床。下流に泊まっていた4人パーティーが我々を追い越していった。我々と同じく中俣を遡行するとのこと。(後で仙台YMCAの人達だとわかる。)
7:40出発。今日は快晴、絶好の沢登り日和だ。照りつける太陽の下、開けたゴルジュがエメラルドグリーンに輝き、我々を魅了する。2日目と3日目は主に横尾、増田が交代で先頭を歩いた。
栃の木沢出合のゴルジュは私が偵察に言ったが、白濁したゴーロ状の斜瀑を渡らねばならず、難しそうなので右岸を高巻くことにした。このあたりからはしぱらくゴルジュが連続する。美しい瀞や淵をへつったり、浸かったり、両岸をちょっと巻き気味に歩いたり、快調に進む。10:30小国沢出合。八久和川の支流は、どれも東京近郊の沢の本流ぐらいあり、スケールの大きさを感じる。その後もなおも淵と小滝が連続する。淵の出口あたりを注意深く見ていると、ときどき岩魚の魚影が目に入る。12:20茶畑沢出合で昼食。佐藤さんは釣りをしに茶畑沢へ入るも釣果なし。しぱらく進むと20m×30mの広く深い釜あり。昔の宗像さんの記事に云う 「大プール」というやつか。こんな所で1日停滞して泳いだり釣りをしたりして遊んだらどんなに楽しいだろう。
平七沢出合の広河原では東大釣りクラブの人達がテントを張っていた。大赤沢出合で休憩。佐藤、松江は釣りをしに沢へ入っていった。(釣果25cm一匹)
ここからはテン場を深しながら歩く。17:20岩屋沢出合下を今日のテン場とする。本日のメニューはそーめん、焼き肉(第2弾)、麻婆春雨、岩魚のバタ―焼き。22:00就寝。

8月15日(金) 曇リ
5:00起床。8:00篭。今日は行程が短いのでのんぴり出発。昨日当たりから渓流足袋の親指のフェル卜が剥がれてきていたので、今日から足袋にシュリンゲを巻いて歩いた。この後しぱしぱシュリンゲが外れて皆に迷惑をかけた。
出発してすぐに左から岩屋沢が合わさるが、不覚にも私はそれに気づかず行きすぎてしまった。去年台風の中を男4人で顔を見つめ合いながら停滞した想い出の岩屋沢なのに。次のオツボ沢出合は左岸を巻く。高くはないが長い巻きだ。一旦オツボ沢を経由して再ぴ本流へ降りる。
9:30小鱒滝、ウシ沢との出合にもなっている。一旦ウシ沢を少し登り、途中から右へ入って本流へ戻る。小鱒滝を巻き道の上から眺めることができる。しぱらく行くと10m×10mの淵。横尾、増田は淵の右を泳いで行くが、佐藤、松江は左から巻き気味に通過。横尾さんは泳ぐことが楽しいらしく、選択の余地のある場面ではいつも水中突破を選んでいたような気がする。
10:30呂滝。釜は深く広い(20m×20m)。11:10弁天ヶ滝。この滝の上の河原で昼食。食後歩き始めてすぐにテン場候補地に到着(12:40)。ザックを置いて西俣出合付近まで偵察に行くが、他に適地なし。西俣の上にもテン場となるような所はないとのことで、大分早いが、先の所を本日のテン場とする(13:30)。
テン卜設営後、佐藤さん、松江さんはいそいそと西俣まで釣りに出かける。早上がりの理由はテン場の問題だけではないような気がしてきた。残された横尾、増田は薪拾い、食事の用意に余念がない。釣り師が二人と仙台YMCAの3人バーティーが通過していった。YMCAパーティーは明日西俣を遡るそうだ。昨日の朝我々を追い越していった中俣パーティーと以東岳で集中するようだ。
16:00釣り組帰還。佐藤さんが、35cm、30cm、25cmの岩魚3匹を釣って来た。初挑戦の松江さんは針に掛けたものの借しくもぱらしたらしい。が、楽しそうだった。これで今夜の夕食が一気に豪華になった。岩魚の刺身は初めてだったが、程良く脂がのり癖がなく旨い。その他には、カレー、岩魚のバター焼き、茄子妙め、直火ソーセージ、等々今日も豪華だ。話も盛り上がったが、明日の行程を考えて少々早めに寝た。(21:00)

8月16日(土) 曇り
天気予報を裏切って、朝からどんより曇っている。本日はここから中俣を突破して稜線へ突き上げ、さらに以東岳までの縦走というハードな行程なので、早起き(4:30)、早出(6:30)となった。
6:55西俣出合着。ここからが中俣だ。幅の狭いゴルジュとなり、滑床の小滝と釜の連続となる。沢床の岩が赤っぽい色をしている。東俣出合で中俣は右に曲がり、5mの滝があり右から直登。続くスラブ状の連瀑(5〜6段、10m×50m)は左岸を高巻く。5m滝、右側を直登。3m×10mの淵、横尾トップで泳ぎ後続はザックピストン。20mの大滝(釜10m×20m)、滝の左側から松江トップで直登。上部は左のブッシュづたいに登る。3mの滝(釜15m×20m)、左をへつり気味に巻く。1mの滝、釜(10m×10m)の右から浸かって滝の下まで行き、「よいしょっ。」と乗っこす。4mスラブ状の滝。7mの滝(釜10m×10m)。6mの滝。6mの滝(釜15mx15m)、右から淵を回り込んで直登。8mの滝、松江さん卜ップで右から直登するが、落ち口近くがいやらしい。増田、横尾は確保して貰って登る。佐藤さんは単独で左から登ってきた。なおも、5m、6m、5mと続く滝を全て直登。登はん的な渓相となつて、松江氏は俄然元気になってきた。
11:30S字峡入り口の12mの滝で先行グループに追いついた。この滝からS字峡にかけては例年なら雪渓に埋まっていて、その姿を目にすることはできないそうだ。そういう意味では少雪の今年はラッキーと言える。ほぽ垂直に切り立った壁で、途中に出っ張りがある。松江氏卜ップで直登し、増田、横尾、佐藤と続く。切り立ってはいるが、ホールドがしっかりしているので思ったより登りやすい。増田、横尾は途中の出っ張りで手間取ったもののなんとか通過。佐藤さんはすいすいと通過。この後S字峡にかかり、ナメ状の小滝や釜がなおも続く。晴れていたらどんなに綺麗なことかと天を仰ぎ見る。
12:30S字峡を抜けて昼食とする。13:00無線交信を試みるが応答なし。使い方がいまいちわからない(無線免許を持っていながら実際の通信は初めてだった・・・反省)。13:35二俣。ザックを置いて右俣へ100mの滝を見に行くが、ガスにかすんで殆ど見えなかった。やがて連瀑帯に突入。1Om前後の滝が連続する急登だ。すべてザイルなしで登ることができる。楽しくもあるが、だんだん疲れてきた。松江さんと横尾さんは快調にとぱしている。佐藤さんは私と同じ目に陥っているようだ。そうこうしている内に連瀑帯を通過、急に傾斜が緩やかになる。15:00再度無線交信を試みるがやはり応答なし。
15:20奥の二俣。まっずぐ行けぱ狐穴小屋だが、ここは右の簾状の滝を登って右俣へ進む。水量が次第に少なくなり、傾斜もなくなり、やがては草原の中の小川となる。夢のような理想的な源頭だ。これで晴れていたらなー、としつこいようだが侮しくてしようがない。
16:25稜線着。霧雨状のガスの中を、以東岳に向けて歩き始めた。この縦走は思ったより長く、疲れた身に最後の追い打ちをかけるようだった。17:3O頃、もうすぐ以東岳かな、というところでガスが切れ視界が利くようになった。周囲の景色に思わず息をのむとともに、行く手の以東岳山頂があまりに遠く見えて嫌気がさす。頂上直下まで来ると、荒川パーティーが全員で出迎えてくれているのが見えた。18:00〜18:30にかけて我がパーティーも無事、以東岳着。再会を喜ぴ合った。そのころにはガスがすっかり切れて、頂上からは朝日連峰を始め、鳥海山、月山を望むことができ、また、夕日がきらきらと反射する日本海も見えた。ここまでの行程を思い返し、充実のひとときであった。
以東小屋は満員状態だった。三面パーティーの到着が遅れていて心配だったが、19時過ぎ疲れ切った様子で無事到着。みんなの話を肴に合宿最後の夜をささやかに祝った。

全体を通しての感想
4日間どっぷりと沢の中に身を置いて長大な八久和川のメインルートを満喫でき、満足できる沢旅だった。沢は場所によりいろいろな様相だった.下流部は開けたゴルジュ帯の中に淵の美しさが際だっていて、へつりや泳ぎが楽しかった。中俣沢に入ってからはナメ状になり、釜を持った小滝が連続して飽きることがなかった。上流部の連瀑帯は全て登ることができるので、登はん的な楽しさも満足させてくれた。
この冬は雪が少なかったため雪渓が全く残っておらず、そのため、中俣を全て地肌の部分で遡行することができた。その一方で、雪渓の処理や草付き泥壁の高巻きと行った場面がなく、遡行の難易度はいつもより低かったようだ。また、少雪の影響か水量が少なく、例年に比べて徒渉や泳ぎが楽だったことも特徴といえる。(記 増田)


《コースタイム》
1日目:八久和ダム林道終点(11:00)〜ムカゲ沢(12:30)〜フタマツ沢(13:45)〜横沢出合上(15:30)〜カクネ沢(16:30)〜テン場〔長沢出合下〕(17:20)
2日目:テン場(7:1O)〜小国沢(1O:30)〜茶畑沢出合(12:20)〜平七沢出合(15:30)〜大赤沢(16:00)〜テン場〔岩屋沢出合下〕(17:20)
3日目:テン場(8:00)〜ウツボ沢(8:35)〜小鱒滝(9:30)〜呂滝(10:30)〜弁天岩滝(11:10)〜テン場〔西俣出合下〕 (12:40)〜西俣出合ビストン(13:30)
4日目:テン場(6:30)〜西俣出合(6:55)〜大滝(8:00)〜S字峡入り口の直瀑(11:3O)〜S字峡(12:15〜12:30)〜二俣(13:35)〜連瀑帯(13:40〜14:45)〜奥の二俣(15:20)〜稜線(16:25)〜以東岳(18:00〜18:30)
5日目:以東小屋(8:00)〜大鳥小屋(9:30〜10:30)〜泡滝ダム(12:50)

〜 感想 〜
八久和川中俣は、昨年台風が来て登ることが出来なかったので、二年目のトライとなった。幸い今年は天候にも恵まれ予定通り登ることができた。そのうえ、昨年の中上流部遡行の計画と違い、八久和ダムからの遡行だったので一段と充実したものとなった。
とうとうと流れる下流中流部、見た目は大したことないと思っても、徒渉すると水勢の強さに驚かされる。上流部は打って変わって、滝の連続。雪渓はまったく無かったので登掌を楽しめた。最後は草原に水は消える。そして、以東岳への集中、夕方霧が晴れて、山頂で手を振る荒川東俣パーティーを見たときには感動した。
今回の山行は、今までで最高の沢登りの一つになった。八久和川のガイドともいうべき佐藤広司さんがいたので安心して登ることができたし、食当の増田さん、横尾さんにはとてもおいしい料理を作っていただき、みなさんにとても感謝しています。《記:松江》