1997年6月1日(日)
L佐藤(広)・斉藤・平沢・渡辺・北原・宗像(久)
前々日あたりから心配していたお天気も、前夜の予報では回復傾向となり、少し安心する。そして今日は、最高の沢登り日和りである。
私は、久々の沢登りと佐藤氏との再会(約10年ぶり)に心が弾む。集合時間よりも早めに行き、奥多摩の新鮮な空気を吸おうと張りきって出かけるが、青梅線の電車の中、奥多摩駅共に余りの人の多さにちょっとがっかりする。今回は、新人のために組まれた山行であり、プランクのあるOB会員としては、新人の方々と同じ気持ちで参加させていただきたい。……と思っている。
奥多摩駅9時15分集合。欠席者、遅刻者もなく全員集合する。北原君は入会を決めていないため、早々とガイド料とやらを徴収されていた。発車間際の奥多摩湖方面行きのバスに飛ぴ乗り(これまた満員)。いざ出発と思いきや発車間際というのにL佐藤氏の姿が見えなくなり、心配しているとバスカ一ドを手にして戻って来た。メンバ一のバス料金を少しでも安くしてあげようという心遣いからの行動であった。
水根バス停で下車し、車道を戻るように進み、目の前の横断歩道を横切る。進行方行左へ少し歩くとすぐに沢が見えてくる。それが水根沢谷である。その沢沿いの車道を景色を楽しみながら歩いていくと緩い上り坂となる。ちょうど息苦しくなって登り切る頃、道が二股に分かれる。入渓点への道は真っ直ぐ進むべきだが、無料の休憩小屋がある左へ入る。そこで身支度を整え、各自ストレッチを行い、小屋のすぐ下から入渓する。標高は580m地点、遡行開始時間は1O時30分である。
転石づたいに軽快な遡行が始まる。沢が左に屈曲すると淵が現われ明るく開ける。釣人がその淵に糸を垂らしていたが、我々の姿を見て退散してしまった。よく見ると橋が掛かっている。ここが一般的な入渓点になっているらい。
沢はどんどん狭まり、2〜3mの釜をもった小滝が続く、水量は奥多摩の沢とは思えないほど多い。新人の皆さんも特に問題もなくへつったり、巻いたりして軽快な遡行を続ける。斉藤さんが新人(特に女性群)を気遣い、「こんなもんよ!」と言う。私も内心ホっとしながら先行し始めると、行く先を完全に塞がれたような、真っ直ぐ落ちる滝(3m)と左側から落ちるナメ滝(4m)をもった大きな釜が現われる。L佐藤氏の到着を待ち、「どっち巻きますか?」と私が聞くと、「何言ってるの、直登に決まってるよ」と一言。そう、ここからが本当の沢登りだったのです。
斉藤さんがリードし、左壁を胸上まで浸かりへつって行く、ナメ滝は一見簡単に登れそうだが、ホールドがないことと滝の落口が水面上から4O〜5Ocm高さの階段状になっていて、それが実は水面下から絶壁状態で続いていたために簡単ではない。不安定なホールドを利用して這いずり上がるような形で登らなければならない。斉藤さん一回目リタイヤ。二回目はザックなしで挑戦する。腕の力を上手に使いクリアする。残るメンバーはシュリンゲを使って引っ張り上げてもらう。私は確保なしの斉藤さんが差し出すシュリンゲに上手く力を預けられず手こずった。(どうしても、斉藤さんを引きずり落とすような気がして…)ここがガイドプックによく紹介されている左壁に3本のシュリンゲがぶら下がっている場所である。やはりこれを利用するのは難しく、斉藤さんのシュリンゲの方がよっぽど役に立った。
一度胸まで浸かりようものなら、私は昔とった杵柄状態。より以上に遡行が楽しくなり、続く3〜4mの釜付き滝の連続をルートを探しながら勝手に進んでしまい、新人のための山行であることを忘れがちであった。それも平沢さん、渡辺さん、北原君が新人とは思えないほど積極的にチャレンジしていたからである。
沢は狭いゴルジュ状が続いていたが、突然、自分の存在がとても小さく思えるほど大きな岸壁が目の前に現われ景色が一転する。先行パーティは遡行中、右岸を高巻いたらしく結構高度がある位置から懸垂下降をする姿が見えた.我々もあのルートを取るのかなと思いながら先に進むと、一見トイ状の4〜5mの滝が大きな釜を持って出現する。釜へ落ちる滝に見とれていると、「さあー、頑張りましょう」とザイルを用意しながらL佐藤氏がやってくる。私は「直登するんですか?」と聞くと、「当然でしょう」と明るい返事が帰ってきた。斉藤さんは奥さんのためにかプールキャップとゴーグルを着けて記念撮影した後、ザイルを付けて勇敢にリードする。左壁をへつり、途中から泳ぎを入れて滝の落口まで到達する。それから手と足の突っ張りを利用して滝を登って行く。感心していると、「さあ、次はお姉さんが見本を見せます。」と言う声に私は自問自答しながら、へつりに入るがすぐに深みに足を取られ泳ぎになる。上手く手と足を突っ張って登ろうとするが、思うようにバランスが取れない。手と足の位置を決めようすると安全確保してくれている斉藤さんがザイルを強く引っ張るのでちょっと登りにくかった。残りのメンバーも次々に登り終えた。特に渡辺さんは綺麗な泳ぎをしていた。
そこを過ぎるとまた小滝や淵の連続であるが、特に問題になるところもなく過ぎ、右岸の枝沢(フジマキ沢)が合流するワサビ田に到着する。ここで1時間の大休止をとる。メンバ―全員少しアルコ-ルが入り元気に1時3O分出発。(標高714m) 水根沢谷といえば半円の滝だが、大休止の場所から40分ほどで着く。出来れば直登してみたいと思うが、今回は斎藤氏の登る姿を見学するだけに止め、残りのメンバーは右岸の岩場を巻いて登る。この滝を過ぎればクライマックスはそろそろ終りとなる。そこで、さすがL佐藤氏は新人のために懸垂下降の練習の準備を始める。優しい口調で解りやすく説明してくれるので、私まで頷いてしまった。
半円の滝を過ぎると沢は大きく右に曲がり、少し進むと広く明るい渓相となる。その左岸の立ち木2本に赤いテープが巻かれており、ここが林道に上がる踏み跡であろう。この側の岩場でも懸垂下降の練習を行うことになったが、私は沢の途中で記録の役を頼まれたので記憶を辿っていた。
それから1時間程遡行し、これが今回の遡行の最後の滝(2m)というのであえて巻かずに左岸をへつっていくが、あと一歩というところで私は滝壷に落ちてしまった。新人の皆さんびっくりさせて御免なさい。佐藤さんには、「また落ちたね」と最後のお言葉をいただきました。
遡行も終了となり、左岸につけられた踏み跡の急登を林道まで一気に登り、その林道を使って下山する。民家が見えてくると、今朝使った無料の休憩小屋は近い。
水根沢谷は、ガイドブックによると積極的に水に入るかそうでないかで、楽しさが全く異なってくる沢であると書いてある。確かにそうであった。半円の滝上で遡行終了とするコースあるいは今回のコースでも、日帰りならば十分時間に余裕があるので、ガイドブックの遡行ルートに拘らず、個人のレベルに応じてあらゆるルートにチャレンジすれば充実した沢登りになることでしょう。最後に二段10〜15mの大滝があるようだが、どれがそうだったのか解らなかったことが心残りである。それと入渓点から半円の滝上までの標高差は100mになっているが、我々の記録(入渓点の手前580m-半円の滝上715m)でも10〜20mの誤差はあるがほぼ同じであった。………無事下山に乾杯!(記:宗像久)
《コースタイム》
水根バス停(9:45)〜水根キャンプ場手前の無料休憩所(9:55)〜入渓(10:30)〜フジマキ沢出合・ワサビ田(12:30〜13:30)〜半円の滝(14:10〜20)〜踏跡(14:25〜35)〜遡行終了・踏跡(15:35)〜水根沢林道(15:40)〜休憩小屋(16:00)
新人山行に加えてもらい、水根沢に行って来た。
釜に入っては滝にとりつき、淵を泳いで登ったりと滝場に挑む我らに新人たちは目を丸くして感心して居る。(あきれているのかもしれないが)"このオヤジただの酒飲みではないな"と思ってくれたらしめた物なのだが...そんな事を考えながら、かんばれてしまう沢だ。
その新人たちも夏が過ぎる頃には"オヤジ、そんなところも登れないの"と目を三角にするほどに成長して居るのだろう。(記 斉藤)